(2008/6/3 初版)
(2009/3/9 2版)
(2013/5/4 3版)
(2016/1/1 一部追記)
(2016/4/9 一部追記)
前職技術部時代、
・設計業務自体について悩む事一回
・構造設計から機構設計に移って悩む事一回
・量産機器開発について、
自分も含めて殆ど知らない者で構成されたチームを率いてガムシャラになること一回
それぞれの時期に、
立花隆の「知のソフトウェア」に書いてあった
「新しい分野を取材する時、
有り金握りしめて大きな本屋に行き、
同分野ジャンルの初中級本を買い占める(少し違う)」
を実践すべく
重ねた残業代を元手に
悔しさ苦しさに押されて様々な本を買い漁り、必要な情報を得てきました。
そんな私の本棚の中から、
特に参考になったものや感銘を受けたものを幾つか紹介します。(2013変更)
※リンク先は全てamazonです。
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●新人の頃に出会いたかった本
メーカーに就職した方、派遣先が開発部になった方などにオススメ
・草間 俊介「東大で教えた社会人学 ―人生の設計篇」
東大の工学部機械工学科での講義をまとめたもので、技術者の人生設計を語った本。メーカーに就職する人はこれを読むと雰囲気がわかるかも。
似たところで
・菊池正典「プロ技術者になる エンジニアの勉強法
」
もオススメ。専門の話が半導体関係ということで、機械系からすると、話題的に少し取っつきにくい部分もあるが、技術者の生き方の一例を示してくれた良い本だと感じた。メーカーに入る人にはお勧め。正味3時間程度で読める分量。派遣社員の人や設計請負業の人には、取捨選択しながら読むことをオススメする←ワタクシはこのクチ。
発刊から10年経過!何十回も刷り重ねて、いよいよ、第二版!
「機械製図初心者」だけでなく、後輩がついた人にも「振り返り」にオススメ
■山田学「
図面って、どない描くねん! (第2版)-現場設計者が教えるはじめての機械製図-
」
(当ブログ二番人気)
「何にしたって、図面が書けないと、読めないと。」ということで、本書は
機械製図本最強解説書と言っても過言ではない。
ほっとんどの設計製図本は学者先生の手によるものだが、
本書は第一線に立つ技術者がまとめた実践製図法。
はじめての機械製図としてあるが、10年未満であれば何らかの発見があると思う。私自身は8年目で出会った本だったが、結構教わる事があった。
山田学さんの本の中の間違いについては山田学さんのWeb Site「
Labnotes by 六自由度」に正誤表があるので、そちらも購入と同時にフォローをオススメしたい(技術者に役立つ情報が多いサイトなので、本書に関係なくオススメ)。
これを読んで、図面を描く以前に図解力から。。。というのであれば、
山田学「図解力・製図力おちゃのこさいさい―図面って、どない描くねん!LEVEL0」から、どうぞ。
設計業務にこれから付く方だけでなく「設計が遅い」と思われている人にもオススメ。
特に案出し段階でCADを使っている人あたりに。
■山田学「CADって、どない使うねん!」
本書はCADの使い方というよりも、CADの役割を踏まえた上での活用の仕方を解説。よって、半分は設計業務の流れや構想検討の仕方など。そういう意味ではCADを使うことが設計業務というイメージしか持っていない人や「機械設計の業務って何?」という人の疑問に答えられる、数少ない本かもしれない。また、自分の業務の仕方を一度見直すには良い一冊。
■黒川篤「設計という名の問題解決 (テクノライフ選書)」
座右の書、その1
構造設計担当時代、歯車がギッシリ詰まったような機構設計もののみが「機械設計」を名乗れるみたいな事を吹聴する先輩に出くわして散々な扱いを受けた時に、「ホントに機械設計ってなんなのよ?」という事で縋った一冊。
「機械設計業務」自体を見直すキッカケになった本。技術以外の設計業務の勉強の起点はこの本。
■ジェームス W.ヤング「アイデアのつくり方」
(当ブログ一番人気)
上記の本のタイトルの通り、設計開発は課題や問題を解決して盛り込んでいく繰返し。その際に、「いかに早く少しでもより良い解決案をひねり出すか?」がポイントとなってくる。ではアイデアって何よ?という時に本書を読んでみると、その真理を提示してくれる。薄いので1時間かからずに読める程度の分量ですが、非常にタメになる。何度読んでもタメになる。発見アリ。今もトイレに置いて、たまに開いています。
■畑村洋太郎「実際の設計―機械設計の考え方と方法」
座右の書、その2。
キング・オブ・機械設計実践論。
設計の意義から構想検討~製図などの実践、特許などの周辺事項まで網羅。
実践から導かれたコツなどが随所に盛り込まれている。
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●非常にお世話になった本
「幾何公差」を設定しなれてない、または惰性で参考図から引っ張ってくる事が多いような方にオススメ。
king of 幾何公差解説本。
■山田学
「図面って、どない描くねん! LEVEL2−現場設計者が教えるはじめての幾何公差−」
↑で「図面って、どない描くねん!」は機械製図本最強と書きましたが、その続編である本書も、幾何公差オンリー本の中では随一のわかりやすさです。
正直、見よう見まねとか、機械設計製図便覧に書いてある一覧等を読んだだけでは意図が伝わる幾何公差を入れる事が出来るかというと難しい。
私自身、機構設計部署に配属されるまで、特に幾何公差を設定したことが無く、配属後、「大体こんなもんかな。。」と思って入れたりして、メーカーから修正要望が来たり、バカ高い値段を請求されたりしていた。幾何公差設定がまともに出来ないな。。という実感はあったので、先輩に聞いたり、本を買って読んだりしたが、イマイチ使いこなせず(そもそも、先輩が…ということもあったが)。それが、本書と出会って、相当改善されたと思う(まだ、修行中ではありますが)。
今まで幾何公差を設定したことが無かったが、異動して幾何公差を設定することが頻繁にある設計対象に変わってしまった人、何となく入れていた幾何公差について学んでみようと言う人にお勧め。
■有泉徹「商品設計者のための射出成形金型入門」
射出成形技術の本はどうしても、金型屋さんよりが多くなるようで、この本は数少ない商品設計者視点の解説本。
プラスチック入門から、型構造、コツなどのノウハウなど。これからプラスチック筐体設計を。。。なんていう人にオススメであるし、機構設計でも量産となれば樹脂部品を多く設計すると思うので、そういう方々にもオススメ。
※追記
2012年にこのような本が出ていたようです。
プロトラブス「思いどおりの樹脂部品設計ここがポイント!」
上記本と同様に部品観点の樹脂成形本であり、この本の特徴としてはプロトラブズさんは3Dデータの扱いを得意としていますので、その観点での3Dデータ作りのポイントを扱っているようです。
近々、内容の確認をする予定です。
こちらは最初に手にしたい歯車入門本!
■ジャパンマシニスト編集部
「歯車 (JMブックスシリーズ)」
歯車解説書は数あるが、大抵、超専門的なものか、平歯車とハスバくらいしか載っていない超入門のいずれかで真ん中が少ない。本書は真ん中入門よりで、歯車設計始めに丁度良い内容と分量だと思う。筐体設計部門から機構設計部門に移った際に最初に手にしたかった本1位。
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●非常に影響を受けた本
■畑村洋太郎「失敗学のすすめ (講談社文庫)」講談社
失敗をどう活かすか。そもそも、失敗とは何か。
■エリヤフ・ゴールドラット
「ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か」
工程の生産性が悪い。スケジューリングがうまく行かない。それは何故か。それを解決する「制約理論」を小説形式に解説。
元々は制約理論を用いた生産管理システムを売るために書かれた「制約理論」を解説するための本だったが、この本を読んで、システムを買わずに制約理論を実施した人達続出、「効果があった」と評判になったというもの。それだけの効果があった本なので、「日本にこの理論が伝わるとマズイ」と永らく翻訳されなかったといういわくつき。
生産管理の本ではあったけど、組織の効率化を考えるにあたり非常に参考になった。
ざっくりな理解を書くと
「工程のアウトプットはボトルネックになっている所に影響される。
そのため、ボトルネックとなっている部分を発見し、改善をする。すると全体の工程も改善される。再度、工程を回し、また別のボトルネックを探して改善する。
を繰り返して、工程の効率をどんどん良くしていく」
という感じ。
もっとザックリ書くと、
ドベネックの桶(有名な木桶の絵。他の桶板が高くても、桶の容量は一番短い板によるというもの。
リービッヒの最小律を表現したもの)。
この考えを幾つかの他者のクレーム案件改善で使った事がある。
グズグズだったチームの動きを観察し、全体作業のボトルネックになっている部分を整理し、一つ一つ改善を行い、設計業務効率を上げて、最終的に顧客との落とし所まで持っていった。
重ねて書くが生産管理の本ではあるけども、設計業務がどうも効率悪い。残業が減らない。納期ギリギリになる。と悩んでいる方には何かしらヒントになるかと思う。本自体が分厚いため、普段本を読まない人には厳しく見えるが小説形式なので、意外とあっさり読めてしまうはず。
…と書いて来たものの、完全理解をしているワケではないので、再読しようと思う(^^;
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●非常に勉強になった本
■國井良昌
「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で「即戦力」」
低コスト化設計について説いた本。専用金型で量産設計をしている製品を設計している人はマストバイ!
「まずは製作見積もりが出来るようになれ!それには試験で良く出るところを押さえるように、多用されている工作法を掴むことが大事!」
というところから始まる。
非常に単刀直入にコツを大胆に提示し、適度に補正する必要はあるがコスト計算の元となるデータを提示した上で、コスト計算の仕方、概要を解説。これだけでも充分に参考になったな。
エントリでも挙げているが、日刊工業新聞社主催の著者の低コスト化設計セミナーのテキストと、ほぼ同内容!セミナーで著者ご本人の熱い解説を聞くのが一番だと思う(実際面白いセミナーでした)が、まずはこの本をご一読頂くと良いのではないかと。
■山田学
「めっちゃ、メカメカ!リンク機構99→∞―機構アイデア発想のネタ帳 わかりやすくやさしくやくにたつ」
機構を羅列した本として、「機械の素」(現在のタイトルは「メカニズムの事典」)という本が既にある。
自分に非を認めた上で書くと、「機械の素」の機構解説は非常に厳しいものがあり、一コマ漫画に→で幾つか移動方向の指示があり、動きの説明の基本は文章のみ。
特許電子図書館で特許調査をしているような人は、たやすく理解できそうだが、自分のような想像力欠乏症には少々ハードルの高い本であったことは確か。そこで、この本である。
リンク機構に限定し、数コマと詳細な解説によりリンク機構を分かりやすく説明。「機械の素」の数十倍の理解のし易さ。この本からヒントを頂く事もしばしば。
また、リンク機構の基礎はもちろん、実際のリンク機構設計に欠かすことができない、アクチュエータの選定、諸計算、センサの良い切り方なども合わせて解説。一つのモータで幾つもの動きをさせるような事務機等を設計している人は持っていると良いだろうね。
これで2100円!安!
続編のバネに関する本もオススメです。
「めっちゃ、メカメカ!〈2〉ばねの設計と計算の作法―はじめてのコイルばね設計 」